コラム 「IPコミュニケーションの明日を読む」
第38回: 「ユビキタス時代のシーソー」

[2007年7月12日掲載]
執筆: 千村 保文(Yasubumi Chimura)
沖電気工業株式会社(OKI)
情報通信グループ セキュリティ・アンド・モビリティカンパニー
バイスプレジデント
兼 OKI IP電話普及推進センター(IPTPC) センター長
休日には、子供達とよく幾つかの公園に遊びに出掛けます。そこで、最近気になったことがあります。
それは、「公園でシーソーを見かけない」ことです。
気になって、インターネットで原因を調べてみました。2003年頃から、シーソーが原因で子供の事故が相次ぎ、維持管理にコストのかかるシーソーを撤去する動きが広がったようです。特に、シーソーの事故は低年齢の児童に多く、親の要請で撤去された例もあるようです。
一方、米国では別の理由でシーソーが減っています。
それは、「シーソーは人権侵害につながる」と言うものです。米国司法省は、2003年に「シーソーは、個人の体重が明らかになる。体重は個人情報であり、シーソーはプライバシーを侵害する恐れがある。また、体重により仲間外れが発生する可能性がある」ため、シーソーの撤去を各州に指示しました。これを不服として従わない州もあるようですが、国によって理由も異なるものだと感じた次第です。
しかし、理由は様々だとしても、シーソーでの「バランスの取り方を知らない」のは、かえって大怪我をする原因になるのではないかと思うのは私だけでしょうか?これは一種の「シーソー恐怖症」でしょう。これは、子供に限ったことではありません。企業も同様の「シーソー恐怖症」に陥っていないでしょうか?
今より数年前に多くの企業では、どこでも仕事ができる「モバイルワーカ」を推奨し、ノートPCを多く導入しました。しかし、幾つかの企業で情報漏えい事故が発生したため、その対策としてPCを「持ち出し禁止」とする企業が増えました。これこそ、人間のモビリティ(移動性)と仕事上のセキュリティ(安全性)のバランスがとれていない実例ではないでしょうか?
無線LANへの企業の反応も同様のようです。最近のPCは、無線LAN機能は標準搭載されていますが、「無線LANは危険」と言う固定概念を持っていると、「無線LAN原則禁止」と言う対策を採ってしまいます。しかし、欧米やアジア諸国の政府や金融機関、公共機関においてさえも無線LANは当たり前に使われ始めています。

これからのユビキタス社会において肝心なことは、シーソーを撤去することではなく、モビリティとセキュリティのバランスの取り方を教えることではないでしょうか?そのためには、まず、やってはいけない一線を明確にするべきだと思います。子供も大人も、危険なことを明確にし、やってはいけないことは周囲で見守る環境が大事です。
何事も、「過ぎたるは及ばざるが如し」です。道具は使ってこそ価値があるものです。人類は知恵を使って道具を使いこなして発展してきたのですから…。
- ※このページに記載されている会社名、製品名は各社の登録商標または商標です。